タンパク質の種類やバランスが畜産牛の健康や生産性に与える影響について興味はありませんか?
CP(粗タンパク質)、DCP(可消化粗タンパク質)、DIP(分解性タンパク質)、UIP(非分解性タンパク質)の役割や関係性を解説します。畜産業に携わる方々にとって重要な情報です。
タンパク質の種類
飼料に関するタンパク質としては、次の4種類を聞くことが多いのではないでしょうか。
- CP(粗タンパク質)
- DCP(可消化粗タンパク質)
- DIP(分解性タンパク質)
- UIP(非分解性タンパク質)
これらの用語は、次のような関係性です。
CP:消化できる部分(DCP)と消化できない部分がある
DCP:DIP(ルーメンで発酵分解されアンモニアになる)とUIP(ルーメンで分解されず第4胃で消化される)がある
ここからは、それぞれのタンパク質用語の概要を紹介します。
CP(粗タンパク質)
CP(Crude Protein)は、飼料中に含まれるタンパク質の全体量を指します。畜産業においては、配合飼料中のタンパク質の総量をCPとして表現します。CPには、牛が消化できるタンパク質のほかに、消化できない成分も含まれています。
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DCP(可消化粗タンパク質)
DCP(Digestible Crude Protein)は、CPのうち牛が消化できるタンパク質の割合を示します。この消化性粗タンパク質は、反芻動物の胃でエネルギーや栄養源として利用される重要な成分です。
DIP(分解性タンパク質)
DIP(Degradable Intake Protein)は、DCPのうちルーメン内でアミノ酸よりも細かいアンモニアになるタンパク質の割合を表します。ルーメン内の微生物(有用微生物・アンモニア利用菌群とも言います)の働きにより、このアンモニアは微生物タンパク質(菌体タンパク質)に作り替えられます。
UIP(非分解性タンパク質)
UIP(Undegradable Intake Protein)は、DCPのうちルーメンでほとんど分解されず、主に第4胃で消化されるタンパク質を指します。この非分解性タンパク質は第4胃以降の消化液でアミノ酸になります。直接的に消化されるため、効率的なエネルギー源として牛に利用されます。
牛がタンパク質を吸収する原理
配合飼料に記載されているタンパク質の種類は、CP(粗タンパク質)、DCP(消化性粗タンパク質)、DIP(分解性タンパク質)、およびUIP(非分解性タンパク質)が挙げられます。CPは飼料中に含まれるタンパク質の全体量を示し、DCPは牛が消化できるタンパク質の割合を表します。DIPはルーメン内でアンモニアになるタンパク質の割合であり、ルーメン微生物の働きにより微生物タンパク質に作り替えられます。一方、UIPはルーメンでほとんど分解されず、第4胃でアミノ酸になるタンパク質です。
牛がタンパク質を吸収する過程は、ルーメンと第4胃の複雑な相互作用によって行われます。ルーメンでは発酵による分解が進み、アンモニアなどの物質が生成されます。このアンモニアはルーメン微生物によって利用され、微生物タンパク質(菌体タンパク質)に作り替えられます。
その後、微生物タンパク質が第4胃に移行し、そこでアミノ酸などの栄養素として吸収されます。このような過程によって、牛は必要なタンパク質を効率的に取り込み、健康な成長と生理機能をサポートしています。
DIPとNFCの関係が重要
配合飼料には様々なタンパク質が含まれていますが、特にDIP(分解性タンパク質)とNFC(非繊維性炭水化物)の関係は重要です。
DIPはルーメン内での発酵によってアンモニアに分解されるタンパク質であり、そのアンモニアはルーメン内の微生物が関与して菌体タンパク質に変換します。一方、NFCは非繊維性の炭水化物で、でんぷんやブドウ糖、オリゴ糖などが含まれます。NFCはアンモニア利用菌群のエサとなり、微生物の活性化に寄与します。
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DIPとNFCのバランスが崩れると、畜産牛の健康や生産性に影響を及ぼす可能性があります。例えば、NFCが不足すると、微生物のエサが不十分になり、微生物タンパク質の合成がうまくいきません。その結果、牛の増体や生産性が低下する可能性があります。アンモニアが増えすぎると、肝臓に負担をかけたり肉食を悪化させたりする原因にもなります。
適切なDIPとNFCのバランスを考慮した配合飼料を提供することが、畜産牛の栄養バランスを整え、健康な成長と生産性を促進するために重要です。
DIPはルーメン内での発酵によってアンモニアに分解され、そのアンモニアは微生物によって菌体タンパク質に変換されることで、牛の健全な成長と生産性をサポートするのです。